校庭の芝生化は、ヒートアイランド現象の緩和に寄与するだけでなく、屋外で遊び回る子どもたちの元気な声が学校に戻ってくるなど、うれしい効果も生み出していて、都内の公立の小中学校で、校庭の芝生化が進められています。

東京都の補助事業では完成した芝生には維持管理をサポートする補助金が用意されていますが、芝生化完了の翌月から36ヶ月、専門的な維持管理費用の2分の1を補助されるものです。

校庭芝生化

(*写真はイメージです、記事の内容と関連するものではありません。)

全国の学校で今、校庭を芝生にする動きが広がっています。
芝生は、子どもたちの教育に、さまざまな効果をもたらすということで、その実態を取材しました。

ふかふかの芝生の上を、はだしで駆け回る大勢の子どもたち。6年前に芝生が敷かれた、東京・杉並区立東田小学校の校庭。休み時間になると、子どもたちが靴を脱いで、一斉に校庭へ駆け出す。児童は、「(芝生の校庭のどこが好き?)気持ちいいところ!」、「(転んでも痛くない?)痛くなーい!」、「(なぜ芝生が好きなの?)気持ちいいから!」、「(芝生の小学校でよかった?)よかった~」と話した。この芝生が、子どもたちに意外な効果をもたらしているという。

緑の芝生が、視覚的にリラックス効果を与え、夏には、校庭の温度上昇を抑制するともいわれていて、児童たちの生活習慣面、心理面にも、良い影響を与えているという。東田小学校の鈴木友美校長は「ここで、思いきり体を動かしますから、おなかもすくんですね。すると、給食をよく食べる。給食の残菜が、ほとんどゼロになった。欠席も、ほかの学校と比べれば、少ないかなと思います。きょうも、1人しか休んでいませんし」と話した。おかわりを、じゃんけんで決める子どもたち。おかわりをする子は「さっきの休み時間は、逆立ちとかしてました。芝生の上で。(いつもおかわりしてるの?)はい」と話した。

校庭を芝生化する学校は、年々増えていて、文部科学省の調査では、小学校だけ見ても、この5年間で2倍近くにまで増えている。この動きをスポーツ界から後押ししてきたのが、Jリーグ元チェアマンの川淵三郎さん。2000年に、鹿児島県で、ある小学校を訪れたのが、きっかけだった。川淵さんは「何気なく、小学校の校庭を見たら、確かに芝生のグラウンドがあるんだね。それが、日本で小学校の芝生を見た最初なんですよ。そこで、28年前に芝生のグラウンドを作ったんだという話を聞いて、すごく感激したんですよ。かけっこなんかも、はだしで走るから、結構速くなったりするんでね、いろいろなプラス面が、芝生の校庭にはあるわけですよ」と話した。

川淵さんは、東京都などに校庭芝生化を進言するなどして、推進活動を行ってきた。芝生化がもたらす効果について、早稲田大学スポーツ科学学術院の間野義之教授は、スポーツ科学の観点から、「だいたい10歳から12歳、このくらいが、さまざまな身体能力を高める重要な機会であると。芝生にすることによって、座ったり、寝っ転がったり、転んだりするような、そういった多様な動きをすることによって、おそらく運動能力が高まる可能性があるんじゃないかと思います」と語った。

さまざまな効果が期待される、校庭の芝生化。しかし、間野教授は、単純に校庭を芝生化するだけでは、不十分だと指摘する。間野教授は「場合によっては、子どもたちは、芝生だからといって、芝生に座り込んで、手遊びをしたり、おしゃべりをしたり、なかなか身体活動に結びつかない。芝生ならではの遊び、動きというものを、指導者も含めて、道具も含めて工夫していかないと、せっかく芝生にしても、芝生の良さというのは出てこない」と話した。
全国で広がる校庭の芝生化。緑色の校庭は、子どもたちの未来を明るく映し出してくれそう。

取材した都内の小学校は、芝生化の初期費用がおよそ4,900万円で、芝の維持費には、年間およそ400万円かかるという。自治体などからの学校への補助金が増えることで、芝生化のさらなる広がりが期待される。

(05/20 13:51)